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「動画の力」再び                               2025/12/2
文明世界以後の歴史を学び直すための良い教科書(入門書)を探していたところ、『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』(山崎圭一著、SBクリエイティブ)に出会いました。著者は公立高校の現役社会科教師であり、YouTuberとしても著名な先生のようです。
歴史の書籍は入門書から専門書まで千差万別で、枚挙にいとまがありません。筆者も宇宙や地球の歴史、生物の誕生といった分野は好んで読んでいましたが、文明世界以降の歴史となると範囲が広く、また個別の出来事に細分化された著書が多いため、過去から現在までを概観できるような「大まかな入門書」を探していました。
ただし、今回書きたいのは著書の内容そのものではなく、「動画=YouTube」の持つ威力・効果を改めて実感したという点です。

著者・山崎圭一氏のYouTubeチャンネル「Historia Mundi」は登録者数15万人以上を誇る大変人気のチャンネルです。世界史・日本史をはじめとする多くの動画が公開されており、筆者もこの動画を通して歴史の学び直しを始めました。内容は高校の歴史科目に相当しますが、黒板に板書しながら進む講義形式で、まさに高校の授業そのものです。とても分かりやすく、筆者にとっては最適な入門編であり、楽しく学ぶことができています。1本は20〜40分程度のため、全200本以上を見終えるには相当な時間が必要ですが、じっくり取り組める環境が理想的です。高校3年分の授業と考えれば、半年〜1年ほどかけて履修できれば十分でしょう。日本史編や地理編もあり、今から楽しみにしています。

筆者は自身のホームページ(ブログ)を自分でデザインし立ち上げる際、書籍だけでは十分ではなく、Web上の「動画」に大いに助けられたことを初回の投稿で書きました。書籍=教科書が基礎であるのは確かですが、授業=動画があることで理解が深まり、学習効果が高まることを改めて実感しています。もちろん書籍の価値が損なわれるわけではなく、事実、本書は2018年の初版から2025年には57刷に達しており、その人気の高さが価値を証明しているといえるでしょう。

「読解力」                                  2025/8/12
数学(算数)の文章問題が解けない理由として、「問題文を正しく理解できない」「文章の読解力が低い」という指摘が以前からあり、筆者もこれまで「なるほど」と思っていました。
しかし今回、新井紀子著『シン読解力』(東洋経済新報社)を読み、日本人の読解力(数学に限らず新聞記事など文章全般)は、大人を含め危機的な状況にあることを改めて認識しました。著書で指摘されているように、「AI」に取って代わられても不思議ではないレベルだと痛感させられました。
多くの大人(筆者自身を含め)は「自分には読解力がある」と思い込んでいます。ところが、著者が開発した「リーディングスキルテスト(RST)」の結果では、高学歴の大人を含めて、残念ながら正答率は低いとのことです。新聞記事の解釈を誤る、つまり正確に読めない例が多いのです。本書にはRSTの一部が掲載されていますので、ぜひ挑戦してみることをお勧めします。
著者は長年の研究を通じ、従来の読解力と区別するために「シン読解力」という概念を提唱し、これを書籍タイトルにも掲げています。筆者自身は簡単な問題には正解できましたが、構成が複雑になると誤答が増え、自分の現実を思い知らされました。
筆者は現在、「ChatGPT」を文章の校正や検索、資料作成の補助に活用しています。プログラムコードの解説にも利用しており、近い将来にはPythonなどのコード作成にも活用しようと考えています。その能力の高さと進歩の速さは周知の事実です。便利な道具であり、いわゆる「タイパ(タイムパフォーマンス)」は格段に向上しますが、依存しすぎれば思考力の低下や、自分で調べ・考える習慣の喪失につながる懸念もあります。
著者は「AIを使いこなせる人材」になるためにも「シン読解力」が必要だと述べています。そして、この力はトレーニングによって獲得できるとも説いています。これは「教科書が読めない子どもたち」だけでなく、「教科書を読めなかった(読めたと思い込んでいた)かつての子どもたち」、つまり現在の大人こそ必要とされる力なのかもしれません。

「労働市場のリアル?」                            2025/4/16
最近、失業保険の手続きや再就職活動の支援のため、ハローワーク(公共職業安定所)に足を運ぶ機会がありました。筆者自身はこれまで利用したことがなかったため、ハローワークの実態を垣間見ることができ、非常に貴重な体験だったと感じています。
サラリーマン時代は採用する側の立場だったため、求人活動や4月の新卒一斉入社といった慣習に特に違和感はありませんでした。しかし、「労働市場」という視点で広く捉えてみると、ハローワークの現状は考えさせられることが数多くありました。
「人口減少」や「人手不足(労働人口の減少)」、「高齢者・女性の活用」など、さまざまな課題について、識者や評論家、各種レポートでは「対策を講じなければ日本経済は破綻する」「イノベーションで解決すべきだ」といった解説がされています。国の施策や産業界の構造改革も進められているのかもしれませんが、本当に解決に向かっているのか、あるいは制度が機能しているのかについては、疑問も残ります。
いわゆる「労働市場のミスマッチ」は今に始まったことではありませんが、民間の求人・転職サイトが活況を呈するなかで、ハローワークとの役割や立ち位置が色分けされてきているようにも感じました(これは筆者の住む地方都市と大都市では異なるかもしれませんが)。
求人の多くは「人の手(力)」に関わる職種であり、たとえイノベーションが進んでも、近い将来に劇的な改善が起こるとは思えません。「労働の対価」も総じて低く、かといって単に賃金を上げるだけで問題が解決するとも限らないでしょう。
「人口減少」「人手不足(労働人口の減少)」は、今や誰もが認める日本の現実です。もし日本が先進国としての繁栄を維持していきたいと考えるのであれば、もはや国や産業界任せではなく、国民一人ひとりが「自分事」として真剣に考えるべき時期に来ているのかもしれません。

「話せばわかる」は幻想?                                  2025/3/27
昨年になりますが、『何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』(今井むつみ著:日経BP社)を読みました。読みながら、「その通り!! そういうことか!? そうそう!!」と、つい独り言を漏らしてしまうほど共感する内容でした。
もし数十年前に読んでいたら、もっと豊かなコミュニケーションができていたかもしれない……と思いつつ、実際にはそんなにうまくいくものでもない、とも感じました。ベストセラーになっているようなので、すでに読まれた方も多いと思います。内容の解説はWebにもありますが、一読をお勧めします。
筆者が特に印象に残った、最後の「まとめ」の文章を引用しておきます。

 「私自身(注:今井むつみ)、本書を書き終えた今、理解し合うことの難しさを改めて感じています。世の中にこれだけの対立があるのには、理由があるのです。
この世界で生きていくということは、自分の芯を持ち続けながら、別のスキーマを持った人々の立場や考え方を理解し、折り合いながら暮らしていくことです。相手の中にも自分の中にも存在する認知バイアスに注意しながら、物事を一面的ではなく様々な観点から評価し、判断する。自分の所属する、帰属する集団の価値観を一歩引いて見つめてみる。メタ認知をしっかりと働かせることを意識していく。しかし自分の芯はブレさせない。」

コミュニケーションや言語は、人間だけの能力ではないことが明らかになっています。高等生物を自認する「人間」として、より高度なコミュニケーションを実現したいものです。

私的ブログを始めました。                                                                                   2025/2/20
メインページの投稿は技術解説に特化していますが、各カテゴリーの更新には時間が掛かるため、ホットな話題(技術)や技術以外の題材など、思いつくまま書いて行こうと思います。

「不易流行」      
先日、太陽電池に関する記事を見ました。
ひとつは、「変換効率30.4%のタンデム型太陽電池、ペロブスカイト+シリコンで実現
もう一つは、「ペロブスカイトに強力ライバル、有機薄膜が単接合変換効率20%超え
タンデム型は、2種類の太陽電池を積層することで発電効率を向上させており、「従来技術の組み合わせ」によって実現しています。
もう一つは有機薄膜型で、材料の進化により現在は使用されていない「初期の製造プロセス」を活用して変換効率を向上させている、という記事です。

筆者は太陽電池の専門家ではないため、詳細は関連記事や技術資料を参照していただきたいのですが、太陽電池本体に関することではなく、手法や発想のプロセスについての所感です。
「従来技術の組み合わせ」は本件に限らず産業界で一般的に用いられる手法です。一方で、現在の有機薄膜太陽電池の変換効率は、製造プロセスの進化によって実現されていますが、材料の進化によって「初期の製造プロセス」でも同等の性能を達成できるようになった点は、重要な視点と考えます。
新技術や新製品の開発手法・プロセスは多種多様であり、これまで数多く議論されてきました。さらに、AIを筆頭に新たな手法が次々と生まれ、発表されてその進化には終着点がないかもしれません。
しかし、「時間」が従来技術の可能性を広げることが多々あり得ます。途中で基本や原点に立ち返り、視界を広く、遠く、そして深く持つことも有意義ではないでしょうか。