非電気機器の防爆構造

こんにちは。
今回は「非電気機器の防爆構造」のお話です。
先日、Webから自社製品の防爆仕様に関する相談を受けました。米国認証(UL,FM)を検討している、とのことで、当該製品や米国認証は詳しくなかったので簡単に調べてみました。当該製品(=局所排気装置)本体に対する国内規格は無さそう(?)で、装置の設置に関して「粉じん障害防止規則」に設置や点検の法規制が明記されていました。まだまだ解らないことが多いのですが、現時点で調べた範囲を書いておきます。

局所排気装置全体としては電気機器ですので、装置全体を防爆仕様にする場合は「防爆構造電気機械器具」として考える必要がありますが、使用環境や装置の構造から製品全体を防爆仕様にする必要は無く、粉じんに接する集塵部分が防爆仕様に対応できれば良さそうです。

ATEX/IECExでは、非電気機器の防爆構造は、
EN/ISO 80079-36:爆発性雰囲気用の非電気機器 – 基本的な方法と要求事項
EN/ISO 80079-37:爆発性雰囲気用の非電気機器 – 非電気防爆構造”c”,点火源制御非電気防爆構造”b”, 油入非電気防爆構造”k”
の規格があります。また、可燃性粉じん用の下記の防爆構造も認められています。
IEC 60079-1: 耐圧防爆構造 ’d’
IEC 60079-2: 内圧防爆構造 ‘p’
IEC60079-11:本質安全防爆構造 ‘i’
IEC60079-18:樹脂充填防爆構造 ‘m’
IEC 60079-31: 容器による粉じん防爆構造 ‘t’
どの防爆仕様にするかは機器の構造、技術的可能性、コスト等から考える必要がありますので、自社でよく検討し判断する必要がありますが、ISO80079-36,-37に基づいた非電気防爆構造と
モータ(電動機)等の防爆構造を考えるのも、ひとつの方法と思われます。

米国の防爆構造規格は、グループやカテゴリーがIECExと異なり、次表のようにclass、Division、groupに分かれIECExより少し細かく分かれています。

ガス・蒸気 Class Ⅰ Division 1 Zone 0 Group A
Group B
Group C
Group D
アセチレン
Zone 1 水素
Division 2 Zone 2 エチレン
プロパン
粉じん Class Ⅱ Division 1 Zone 20 Group E
Group F
Group G
金属粉じん
Zone 21 炭素粉じん
Division 2 Zone 22 非導電性粉じん
繊維/飛来物 Class Ⅲ Division 1
Division 2
Zone 20
Zone 21
Zone 22

ひとつの表にまとめたので解りずらいかも知れません。条件等で表の区切りに当てはまらない場合が有りますので、詳細はULサイトやNEC(National Electrical Code)のArticle 500~505等を参照してください。
ただ、米国では非電気機器の直接的な規格は無さそう(?)でISO80079-36,37を引用しているようです。一般的な「防爆構造電気機械器具」に関しては、UL、FM、ISA等で規定され、IECExと同じ60079-xxシリーズも全てではありませんが、ISAで採用されています。また、防爆構造としてはIECExの防爆構造とほぼ同じ体系になっています。

主な規格としては、
UL913: Intrinsically Safe Apparatus and Associated Apparatus for Use in Class I, II, and III, Division 1, Hazardous (Classified) Locations
(クラス I、II、および III、ディビジョン 1、危険 (機密) 場所で使用するための本質安全装置および関連装置)
UL1203:ExplosionProof and Dust-IgnitionProof Electrical Equipment for Use in Hazardous (Classified) Locations
(危険 (機密) 場所で使用するための防爆および防塵着火電気機器)
NFPA496:Standard for Purged and Pressurized Enclosures for Electrical Equipment
(電気機器用のパージおよび加圧エンクロージャの規格)
UL121201:Nonincendive Electrical Equipment for Use in Class I and II, Division 2 and ClassIII, Divisions 1 and 2 Hazardous (Classified) Locations
(クラス I および II、ディビジョン 2 およびクラス III、ディビジョン 1 および 2 の危険(機密) 場所で使用するための非発火性電気機器)

FM3600:Electrical Equipment for Use in Hazardous (Classified) Locations – General Requirements
(危険 (機密) 場所で使用する電気機器 – 一般要件)
FM3610:Examination Standard for Intrinsically Safe Apparatus and Associated Apparatus for Use in Class I, II and III, Division 1, Hazardous (Classified) Locations
(クラス I、II、III、ディビジョン 1、危険 (機密) 場所で使用するための本質安全装置および関連装置の試験基準)
FM3611:Nonincendive Electrical Equipment for Use in Class I and II, Division 2 and ClassIII, Divisions 1 and 2 Hazardous (Classified) Locations
(クラス I および II、ディビジョン 2 およびクラス III、ディビジョン 1 および 2 の危険 (機密) 場所で使用するための非発火性電気機器)
FM3615:Explosionproof Electrical Equipment General Requirements
(防爆電気機器の一般要件)
FM3616:Dust-Ignitionproof Electrical Equipment General Requirements
(粉塵防火性電気機器の一般要件)
FM3620:Purged and Pressurized Electrical Equipment for Hazardous (Classified) Locations
(危険(機密)場所用のパージおよび加圧された電気機器)

ANSI/ISA-60079-0:一般要件
ANSI/ISA-60079-7:安全性の向上「e」による機器の保護
ANSI/ISA-60079-10-1:エリアの分類 – 爆発性ガス雰囲気
ANSI/ISA-60079-10-2:エリアの分類 – 可燃性粉塵雰囲気
ANSI/ISA-60079-11:本質安全防爆「i」による機器保護
ANSI/ISA-60079-15:タイプ「n」機器保護
ANSI/ISA-60079-27:フィールドバス本質安全コンセプト (FISCO) およびフィールドバス非発火コンセプト (FNICO)
ANSI/ISA-60079-31:エンクロージャ「t」による機器の粉塵発火保護
等があります。
規格としては米国独自のものですがIEC60079-xxシリーズの夫々の防爆構造をベースに、米国用にアレンジすることも可能と思われます。ULやFM規格の要件は別途調査したいと思います。

筆者の考えとしては、自社製品の防爆構造を考える場合、
1.国内市場のみに限定するのであれば、TIIS等で国内専用に認証を取得する。
2.世界展開も考えるなら、IECExを認証して、国内向け認証も同時に取得する。
3.米国専用であれば最初からUL、FM規格の認証を行っても良いのですが、IECEx取得→米国取得でも良いと思えます。
ただ、検定料等の初期費用は、国内はTIISがWebで公開しており筆者も安価な料金と思いますが、IECExやUL等の認証取得に関しては、それぞれの認証機関で全て個別見積もりになり、金額の桁が変わるぐらいにアップしますので初期費用や開発コスト、ランニングコスト等は充分検討、見積もりしておく必要があります。

IECExを取得しておけばIECExに加盟している各国、地域での認証取得が容易になります。別投稿の法規制でも書いたかもしれませんが、技術基準(IECEx)と各国、地域の法制度は別になりますので、各国、地域での認証取得はそれぞれ行う必要があります。
以前にも書いたと思いますが、防爆電気機器の開発と製品には一般製品の場合より数倍以上の「時間、費用、コスト」が掛かります。充分検討し開発計画を進めると良いでしょう。しかし、完成した製品は市場における優位性、差別化が可能となり、市場価値が上がるとともに自社の技術力もアップします。どんどん新しい技術にチャレンジして欲しいと思います。

IECExは工場審査があり3年ごとに更新審査、中間に定期監査があります。ULやETLも4回/年の定期監査がありますので維持費用に加えておかなければなりません。法規制や規格対応製品は何らかの定期的な維持費用が発生しますので、工場経費や製品のランニングコストは通常製品以上にかかると考えておきます。

「非電気機器」でも、発火源として摩擦熱、衝撃(金属間)による火花、静電気放電等が考えられ、温度上昇を抑制したり、エネルギーを抑制する構造が必要になります。粉じんは導電性や非導電性及び可燃性等に分けられますが、接地や温度抑制、静電気対策等は必須になりますし粉じんと接触する可能性がある電気機器の対策も検討する必要があります。
局所排気装置の場合「非電気機器」として、ISO80079-36,-37の防爆構造にするのが理想ですが、自社機器の構造、状況に合わせて最適な防爆構造を検討すると良いでしょう。
Webで米国製の防爆対応局所排気装置等のカタログ等を見ると、UL,ETL等の取得であったり使用できるClass、Division、Group等は明記されていますが、防爆構造の種類が不明な部分があったりもします。使用環境・条件等の指定が必要な場合も有りそうです。

今回は調査不足のため充分な技術的要素を含めることが出来ませんでした、がいろいろと勉強することが出来ました。各規格の詳細までは調べられませんでしたが、何事も調査してみることで多くのことが解りました。時間は掛かりますがひとつひとつ確認することで知識が広がります。装置個々の設計規格は重要ですが、各国、地域の法規制を含めて全体像を把握しておくことも重要です。米国防爆認証(UL,FM等)は引き続き調査したいと思います。

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参考文献
EN/ISO 80079-36:非電気防爆構造ー基本方法及び要求事項
EN/ISO 80079-37:非電気防爆構造ー構造安全非電気防爆構造”c”,点火源制御非電気防爆構造”b”, 油入非電気防爆構造”k”

JAPAN.UL:防爆認証向けサービス https://japan.ul.com/resources/hazloc/
DEKRAジャパン:https://www.dekra.co.jp/ja/explosion-protection/
UL規格:https://www.shopulstandards.com/Catalog.aspx
ISA(International Society of Automation)規格:https://www.isa.org/standards-and-publications/isa-standards/
粉じん障害防止規則:https://elaws.e-gov.go.jp/
NFPA:https://www.nfpa.org/For-Professionals/Codes-and-Standards/List-of-Codes-and-Standards
NFAP70/NEC:https://www.nfpa.org/product/nfpa-70-code/p0070code
FM:https://www.fmapprovals.com/products-we-certify/products-we-certify/electrical-equipment-for-explosive-atmosphere

工場電気設備防爆指針(国際整合技術指針):JNIOSH-TR-46-xx:2015,:2018
ユーザーのための工場防爆設備ガイド:JNIOSH-TR-NO.44
「IEC(EN) 60079-xx」シリーズ規格:Explosive atmospheres – Part xx
「ISO/IEC80079-34」:Explosive atmospheres — Part 34: Application of quality management systems for Ex Product manufacture